愛知トリエンナーレ「表現の不自由展」2019年08月04日 20:44

名古屋市長が軽々しく「日本国民」といっている。
彼の含意するところは「例外なくすべての日本人」であろうが、それは論理的にも事実にも合わない。
「すべての」反証として、日本人の私は、なぜ、暴力的でもなく性的な要素も一切ない、チマチョゴリを着た感情のない慎ましい少女の造形表現が、「従軍慰安婦を象徴する・それに抗議をする」という政治的象徴表現とされたのかを、ぜひ知りたい・感じたいと思うからだ。
造形表現というのはそういうものだと思う日本人は、愛知県知事・津田大介氏を含め少なくはあるまい。
ならば市長の言い分は「一部の日本人は」と言い替えるのが正しい。
そのような「部分的日本人が傷つく」事柄は日常茶飯事である。例えば、相撲・高校野球中継のおかげでラジオのレギュラー番組がなくなって傷つく日本人がいるというのと「等価」である。したがって、これらの中継をやめるべきだと言う、まことにおかしなことになってしまう。
自身の政治信条や、集票目的のために、「一部の人々が」いやだと感じる事柄を排除を平然と強いることは、ひにくにも「少女像」が象徴する政治プロパガンダと同じ理屈だと言える。
国と国との関係に緊張が高まっているとき、市民レベルにその緊張が及ばないように努力するのが自治体の首長ではないのだろうか。
テロ予告をする一部のうちのごく一部の「犯罪的日本人(京都アニメーション放火殺人容疑者と同じ)」の肩を持ったことになるまことに罪深い市長の行為だったと言えよう。

官庁の障害者雇用数水増し問題2018年08月29日 20:13

もと地方公務員である自分から見ると、やっと今ごろわかったかという問題。ほぼすべての役所で水増ししていることは疑いない。
この問題の根は意外に深い。
背景には、世論の公務員たたきがあるからだ。曰く「公務員は人が多すぎ、仕事をしない割に、労働条件や福利厚生が手厚い」。
この圧力によって、役所の人員はずっと減り続けて、ほぼ限界まで来ていると思う。障害者でなくてもきつい職場・労働環境になっている(うつ病などの休職者の数も多い、休職者は定員数なので正規職員による補充はなく残った職員の負担となる)。
障害者を雇用してしっかりその能力を発揮してもらうためには、環境整備が不可欠だが、上記世論がある限り、役所の労働環境改善は、「役人のお手盛り」と断じられかねない。世論は、それに敏感な議員たちによって追求され、議会ともめるのを避けたい行政当局を事なかれ主義に走らせる。
その結果が、とりあえず数字だけ合わせておこうという今回の事態の真相である。
障害者を含め労働環境の範たろう、民間は我々をこそ見習えという気概はなく、世論もそんな目では見ていない。
試しに役所と同規模の民間企業の障害者雇用率を見てみれば未達成は普通にあるだろう。この点が「民間なみ」ということを世論は許さない。従って、どの役所も抜本的な労働環境改善には取り組むまい。
たぶん、数年後に再び調査をすると、堂々と雇用率未達成か、再び水増しかのいずれかであろうと推測する。

任意の解散は憲法違反か?2017年09月29日 17:02

解散直後の万歳
総理大臣の「任意の(政局要因による)」衆議院解散権は憲法違反ではないかという議論をしたいと思う。
法学界の主流は、憲法第七条三号(天皇の国事行為)にある解散は、内閣の助言・決定に基づいてなされるので、事実上内閣総理大臣には任意の時期に解散をする権限があるとするものであるといえる(国会で衆議院議長が読み上げる「詔書」は、つねに憲法第七条により解散すると書いてある)。

それに対し、総理大臣による衆議院の解散は、第六十九条にある「不信任の可決あるいは信任の否決」しか明文の事由がないので、それ以外の解散はできないとする意見もある。
しかしこれは現在では少数意見であり、第七条三号の解散理由は第六十九条に縛られないというのが、実際の解散事実の積み重ねによって既成事実化されている。
第六十九条以外の解散権の行使は憲法違反で無効だという主張は、過去裁判になったことがあるが「高度な政治行為に司法判断はなじまない(統治行為論)」として退けられている。

<参考;苫米地事件>Wikipediaより引用
解散で衆議院議員の地位を失った苫米地義三は解散の無効を主張し歳費請求訴訟を提起したが、その上告審において最高裁判所は、いわゆる統治行為論を採用し、高度に政治性のある国家行為については法律上の判断が可能であっても裁判所の審査権の外にあり、その判断は政治部門や国民の判断に委ねられるとして、違憲審査をせずに上告を棄却した。

このような現実があることを踏まえた上で、もう一度憲法の想定する国家の権力構造という点から考えてみたい。

憲法上日本の主権者は国民である。
憲法前文には「こに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とある。そしてすぐあとに主権の具体的な行使として「その権力は国民の代表者がこれを行使し」と書かれ、
第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
に引き継がれて具体化される。
つまり、国会を上回る権力は憲法上存在しない。その根拠は、主権者の意思の表明として直接選挙によって選ばれているところに求められる。
一方、行政の長である内閣総理大臣は国会の多数決で選ばれる。代表者の中での互選なので、主権者の国民からは「間接」である。国民への責任と言うより国会に責任を持っている。
この制度を「議院内閣制」と呼ぶことは、社会科で習っているはずだ。
この制度のいいところは、国会と内閣(立法府と行政府)が深刻な対立をせず、スムースに国政が遂行されるところだ。
とはいっても内閣と国会与党が対立するかも知れない。
そのときのために第5章「内閣」には次の条文がある。
第六十九条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

国会が総理大臣以下内閣を「全員クビにしてやる!(内閣不信任議決)」と言うことができる。それが理不尽だと思えば、今度は総理大臣が「お前たち衆議院議員こそ全員クビだ!(=解散)」といって、対立のリセットができると定められている。
国会が選んだ総理大臣だからこそ、先に内閣不信任を突きつけることができ、そしてその対抗策として初めて「解散権」が発動できる。
不信任(信任の否決)が先で解散が後、この順序は不可逆であることは、国会を「国権の最高機関」と定める憲法上は当然といえる。
「天皇の国事行為」を定めた憲法七条三号は、二号の「国会を召集すること」のバランス上「解散」をおいたものとみることが妥当で、それ以上でも以下でもないだろう。内閣や内閣総理大臣の権能とは関係がない。
総理大臣は、議院内閣制をとる限り国会に従属しなければならない。もしも、総理大臣が任意に衆議院を解散できるとなれば、「国権の最高機関」を上回る「超権力」となってしまう。
これは憲法の予定する権力構造(ヒエラルキー)とは異質と言わねばならない。
いくら第七条の法解釈上「合憲」であっても、総理大臣の「大権」としての任意解散権の容認は、他国の領土領海等で大規模な武力行使を自衛隊に容認するのと同じ程度には、憲法の「基本構造」に違反するのではないかと思う。

追伸;首相公選制は上記問題を解決しない。

首相公選制は、天皇がいるため「大統領制(=元首)」を敷けない日本ならではの方便だと思う。
全有権者の選挙によって選ばれた「首相」は主権行使の代表者で国会と対等となる。その権限は現行憲法を換骨奪胎するような、国家権力体制の抜本的な転換である。
当然のように首相が属する政党は、国会内の少数派であることもあり、「衆参ねじれ国会」以上に政策の実行には困難が伴う。不信任議決が多発することもあり得る。
また過去、名古屋市で現市長が行ったように、自身の政策公約実施のために「解散権(実際には、市長の解散権には制限があるのでリコール制度を使った)」を使うこともあり、首相派と議会派の深刻な対立を生むかも知れない。
地方自治法のように総理大臣と国会の具体的な牽制関係も規定しなければならないだろう。
単に首相を有権者の投票で選ぶだけでは済まされない、大幅な現状変更が必要で、必ず憲法を改正しなくてはならない。
公選首相と天皇の関係も微妙となる。どちらが「日本の顔」なのか。
どっちでもよいというのは多分共産党だけだろう。

憲法私案(全文)2017年08月10日 20:59

日本国憲法改正「私案」

前文

我々日本国民は、戦争には勝者も正義もなくただ人類の悲惨があることを学び、恒久の平和を希求して憲法を定め、国民主権、三権分立の民主主義のもと人権と自由を守り今日の繁栄を築いてきた。
ここに憲法を改正するにあたりこれらの諸原則をさらに堅固にし、日本国民と日本に居住するすべての人々に一切の差別なく適用されることを将来にわたって約する。
日本国民は、いずれの国の国民も等しく自身の文化を愛することを自覚し、専制と隷従、暴力と貧困の恐怖を克服しようとする国際社会と協調して、法と高い人間倫理による、よりよい人類世界に貢献することを誓いこの改正憲法を確定する。

第一章 天皇

第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第二条  皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。
第三条  天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第四条  天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
○2  天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
第五条  皇室典範 の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
第六条  天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
○2  天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第七条  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一  憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二  国会を召集すること。
三  第六十九条によって衆議院を解散すること。←第六十九条によってを挿入
四  国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五  国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七  栄典を授与すること。
八  批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九  外国の大使及び公使を接受すること。
十  儀式を行ふこと。
第八条  皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

第二章 戦争の放棄と自衛権

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の規定にかかわらず、自国防衛のための自衛権に基づく軍事力はこれを保持する。
 3 日本国と第3国との間の双務軍事同盟および集団的自衛権はこれを認めない。
 4 国の徴兵権はこれを認めない。
 
第九条の二 前条第2項の自衛権は陸上、海上、航空自衛軍により行使される。
第九条の三 自衛権の行使は日本の領土、領海、領空および国際条約上で認められた排他的水域で他国による攻撃があった場合に認められる。
 2 自衛権による武力行使は、自衛のための最小限とし、他国の領土領海領空では行わない。
第九条の四 前条のほか、国際連合と当事国政府の合意のもとで、他国と共同で平和維持活動に自衛軍を派遣することができる。
 2 派遣中の自衛軍に対する攻撃があった場合の武力行使は、第九条の三にかかわらず、自衛権の行使とする。
第九条の五 平和維持活動中は、捕虜の扱いに関する国際条約における軍の規定を適用する。
 2 平和維持活動中の自衛権の行使による他国民の殺傷について派遣自衛軍において軍事裁判を行うことができる。
 3 軍事裁判の刑罰及び手続きは法律で定める。ただし刑罰に死刑を設けることができない。
 4 軍事裁判の判決に不服のあるものは帰国後通常の裁判を起こすことを妨げない。

第三章 国民の権利及び義務

第十条  日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
 2.基本的人権の具体的な権利は制限的に解してはならない。(第2項を追加)

第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 2.日本に滞在または居住する外国人についても、外国籍であるゆえをもって前項の権利について差別されない。(外国人の人権差別禁止を明文化した第2項を追加)

第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
○2  華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
○3  栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第十五条  公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
○2  すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
○3  公務員の選挙については、普通選挙を保障する。(←「成年者による」を削除)

○4  すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
第十六条  何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
第十七条  何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
第十八条  何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
○2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
○3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第二十一条の一 (知る権利を明文で追加)
国民は、国及び地方公共団体の保管する情報の公開請求ができる。
 2.前項にかかわらず法律により公開を制限することができる。ただし制限期間は30年を超えることができない。
 3.前項の制限ができる情報は、最小限でなければならず、相当の理由を明示しなければならない。
 
第二一条の二 (個人情報の保護)
個人に固有の情報は厳重な保護を要する。
 2.国または地方公共団体は保有する個人固有の情報によって、個人の権利を侵害してはならない。
 
第二十一条の三(以下2条は、差別の禁止を定める)
 第二十一条にかかわらず、あらゆる差別に関してそれを煽り、政治目的とする結社、表現はしてはならない。
第二十一条の四 国及び地方公共団体およびそれらが関与する団体においてあらゆる差別はこれを禁ずる。
 2.差別の排除撤廃に関し、国が締結した国際条約に反する法律規則はこれを無効とする。
 3.前項に抵触する法律規則は速やかに変更しなければならない。

第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第二十三条  学問の自由は、これを保障する。
第二十四条  婚姻は、個人の合意のみに基いて成立し、配偶者双方が同等の権利を有する。
○2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と平等に立脚して、制定されなければならない。
(LGBTなど婚姻の多様化に対応する)

第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
○2  国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第二十六条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第二十七条  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
○3  児童は、これを酷使してはならない。
第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
○2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
○3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
第三十条  国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
第三十一条  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第三十三条  何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第三十四条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第三十五条  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
○2  捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
第三十六条  公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2  刑事被告人は、すべての証人及び証拠品、取り調べ記録に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
(第2項、「全ての証人」を「全ての証人及び証拠品、取り調べ記録」とする。)

第三十八条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
○2  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
○3  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
第三十九条  何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
第四十条  何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

   第四章 国会

第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第四十二条  国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第四十三条  両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
○2  両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
第四十四条  両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
第四十五条  衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
第四十六条  参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
第四十七条  選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第四十八条  何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

 2 地方公共団体の長及び議会の議員、その他法律で定めた公務員も両院議員を兼ねることができない。
 3 2以上の国籍を持つもので、外国の公務員であるものは、両院議員と兼ねることができない。
 (第2項3項を追加)
 
第四十九条  両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

第五十一条  削除(第五十条の不逮捕特権と重複して無意味化しているため)
現行→(両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない)

第五十二条  国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第五十三条  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、14日以内に国会の召集をしなければならない。(臨時会の招集期限を定める)
現行→(その召集を決定しなければならない。)

第五十四条  衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
○2  衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
○3  前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

第五十五条  削除(第五十八条の懲罰による除名規定と重複しており無意味)
現行→(両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする)

第五十六条  両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
○2  両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第五十七条  両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
○2  両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
○3  出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
第五十八条  両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
○2  両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第五十九条  法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
○2  衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
○3  前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
○4  参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
第六十条  予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
○2  予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第六十一条  条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
第六十二条  両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
第六十三条  内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第六十二条の一
衆議院は、所属議員の4分の3以上の賛成を持って解散の議決をすることができる。

第六十四条  国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
○2  弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

第五章 内閣

第六十五条  行政権は、内閣に属する。
第六十六条  内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
○2  内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
○3  内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
第六十七条  内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
○2  衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第六十八条  内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
○2  内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
第六十九条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
○3 内閣総理大臣は、衆議院の解散の議決があったときには、ただちに衆議院を解散する

第七十条  内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

第七十条の一
内閣総理大臣が、心身の故障により意思の伝達が不能となったと認められる場合は、法律の定めに基づいて、職務代理者が職務を執行する。
 2.前項の場合において、職務代理者は、30日以内に内閣総辞職するか衆議院を解散しなければならない。
 3.内閣総理大臣が意思の伝達が可能となった場合は、職務代理者は直ちに職務を内閣総理大臣に引き継がねばならない。

第七十一条  前三条(七十条の一を追加したため変更、現行→前二条)の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
第七十二条  内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
第七十三条  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一  法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二  外交関係を処理すること。
三  条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四  法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五  予算を作成して国会に提出すること。
六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

第七十三条の一
内閣は自衛権の発動と終結を決定する。ただし発動及び終結後速やかに国会の承認を得なければならない。

2.内閣は、平和維持活動に派遣される現地指揮官に自衛権の発動と終結の権限を国会の承認を経て委任することができる。
委任を受けた現地指揮官は、開始と終結についてただちに内閣を経由して国会に報告しなければならない。

第七十三条の二
内閣は自衛軍すべての行動に責任を負い、行動について速やかに国会に報告しなければならない。
(自衛権を認めた以上、自衛軍に対する内閣の責任と国会の関与を明確化しなければならないのは当然なので、条文を追加する)

第七十四条  法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
第七十五条  国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

 第六章 司法

第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
○2  特別裁判所は、国外派遣の自衛軍における軍事法廷を除いて、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
○3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第七十七条  最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
○2  検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
○3  最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
第七十八条  裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
第七十九条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
○2  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
○3  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
○4  審査に関する事項は、法律でこれを定める。
○5  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
○6  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第八十条  下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
○2  下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

第八十一条の一(現行では機能していない違憲立法訴訟の手続きを明文で追加)
国会で成立した法律が憲法に違反すると両院のそれぞれ3分の1以上議員が認めるときは、法律の公布後30日以内に、最高裁判所に当該法律が憲法に違反し無効である旨の訴訟を起こすことができる。
2.最高裁判所は、訴えが起こされたときから60日以内に違憲か合憲かの判決を下すものとする。
3.前項の判決により違憲と判断された法律または条文は、無効となり、改正の場合は従前の条文が有効となる。
4.違憲立法訴訟は、法施行後の憲法に違反する旨をもっての一般訴訟を妨げない。


第八十二条  裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
○2  裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

第七章 財政

第八十三条  国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
第八十四条  あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
第八十五条  国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
第八十六条  内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
第八十七条  予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
○2  すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
第八十八条  すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
第八十九条  公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
第九十条  国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
○2  会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
第九十一条  内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

   第八章 地方自治

第九十二条  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第九十三条  地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
○2  地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第九十四条  地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

第九十四条の一(現在法的地位がはっきりしない住民投票を明文で制度化)
地方公共団体は、行政の執行や財産の管理その他に関することを、住民による直接投票によって決定することができる。
 2.住民投票に関することは法律及び地方公共団体の条例で定める。

第九十五条  一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

   第九章 改正

第九十六条  この憲法の改正は、衆議院の総議員の三分の二以上、参議院の総議員の二分の一以上の賛成で(改正発議要件を緩和する。現行→各議院の総議員の三分の二以上の賛成で)、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
○2  憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

   第十章 最高法規

第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 2.基本的人権の保障は、日本国民でないゆえをもって制限的に解してはならない。
(外国人差別を防止する観点から第2項を追加)

第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

第十一章 補足 省略

アメリカ大使館エルサレム移転がもたらすもの2017年04月10日 23:01

アメリカ大使館をエルサレムに置く、つまりトランプ大統領が、1995年議会が成立させた大使館移転法を是認すると、国連が「国際管理都市」としてイスラエルの領有を認めていないという国際合意を、アメリカが公然と無視することを意味する。
アメリカが無視するなら、もはや北朝鮮を誰も非難できず、ロシアも中国もやりたい放題となろう。
国際連合は、国際無法連合へと変貌する。帝国主義(国家単位の実力成果主義)が復活するともいえる。
それも剣呑な話だが、もう一つ過去の亡霊、ゾンビが復活する。
ユダヤ人ヘイトだ。
もしも、アメリカ大使館のエルサレム移転が実現され、それをきっかけに、第5次中東戦争が起き、多量の難民や、イスラム過激派によるテロが多発する世界同時不安定が起きたとき、このように言う人々が現れる。
「諸悪の根源は、イスラエルを無理矢理建設し、世界の富を牛耳るユダヤ人の存在だ。ヒットラーナチスは間違っていなかったどころか、不徹底だった、ユダヤ人は根絶やしなければ世界の不安定は終わらない」
これがネットを通じて、あまたある「フェイクニュース」に混じり、あっという間に拡散する。
ネオナチは、下手をすると、絶対禁止であるはずのドイツですら公然と闊歩する。
この悪夢が正夢になれば、人類は、第二次世界大戦という悲惨からもまったく学習できない生き物であることを示す事になるかも知れない。

違憲立法審査はどうあるべきか2016年06月12日 22:01

昨年成立した「安保法制」を境に、憲法には最高裁判所の権能として書かれている「違憲立法審査権」が機能していないことが改めて議論されている。
目下、最高裁判所の憲法判断は、何らかの具体的な行為による訴訟(「安保法制の成立によって、平和な生存権が侵されて精神的苦痛を受けた」とか)の付属的な問題として扱われ、憲法違反だから無効だと申し立てることはできない。
国が締結した条約、たとえば日米安保条約そのものは「外交政策など高度な統治行為には司法判断はしない」と門前払いに近い扱いを受ける。条約に対応する国内法についても同様である。
それゆえ最高裁の「違憲立法審査権」は、絵に描いた餅じゃないか、と言われて久しい。
そこで、憲法を改正するなら、違憲立法審査権を強化する方策が議論されている。
ひとつ、有力な案は、諸外国にも既にある「憲法裁判所」という憲法違反かどうかを専門に扱う司法組織を新設するというものだ。
日本では「読売新聞憲法改正試案」にその記載がある。
もう一つは、有力ではないが、私の「改正私案」も採用する、違憲立法審査の手続き(何を誰かいつ訴え、最高裁判所はどのように判決に至るのか、その効果はどうか)を定めようとするものである。

憲法裁判所のメリットは、強力でシンプルなことである。
国会で議決成立したすべての法律や内閣の政令などをすべて憲法裁判所のチェックを受けるようにすれば、理論上「憲法違反」は起きなくなる。
問題は、まず、三権分立のバランスが崩れることだ。憲法裁判所の権能は、国会で成立した法律の「拒否権」とも解釈できる。国会も内閣も自治体も、決してここを無視できないから、絶対権力である。
したがって裁判官の任命権をどうするのかによって、事情は大きく異なることになる。議院内閣制をとる日本では、国会と内閣は一体だから、そのいずれにも形式的な任命権(最高裁判所の推薦を拒否できず機械的に任命する)以外のものと与えるのはきわめて危険である。最高裁判所の推薦に拠ることとしても、最高裁判事の任命権を内閣が握っているので、政権与党の思惑が入り込む余地は残る。
最高裁判所と憲法裁判所の上下関係もかなり難しい。別々の「長官」を定め「衆・参両院議長」のように並立してのがよいかもしれないが、予算などの優先権がある衆議院議長程度の「格上」感が憲法裁判所長官に生まれるだろう。最高裁といえども憲法問題は憲法裁判所に伺いを立てることになるからだ。
新しい組織、しかも憲法に基盤を持つものを作るとなると、事務方をはじめ、最高裁以下現行の裁判所との関係など組織整備法制が必要となる。憲法裁判所の「訴えの手続き」とか「審理の方法」の在り方も決めなければならないだろう。現行76条第2項の「特別裁判所の設置禁止」との整合性も検討することになる。
とにかく手間とコストがかかる。

一方「私案」のように違憲立法審査の手続き(誰がどうやって何を訴えるのか)を定める場合には、最高裁判所による「統治行為論」を乗り越えることができるのか、また自身が行った「判例」に縛られてしまうのではないかという懸念がある。
訴えるのが誰かという問題もある。読売新聞私案と私の「私案」では衆参両院議員の3分の1以上の賛成で、国会議員が起こせるとしている(読売は憲法裁判所への提訴だが)。両者とも、多数派である与党が起こすことは考えられないという前提に立っている。
国会での審議を通じて問題点をよく知る国会が行うとするのは一定の合理性がある。
一般国民に拡大すると、「個人で」では乱用の恐れが大きい、地方自治法にある直接請求権を拡大するやり方は、署名の有効を審査する事務(地方自治体の選挙管理委員会が実務を行う)は、全国にわたるので非常に煩雑で予算がかかる。
したがって、訴えの提起は国会にゆだねるのが妥当と言える。しかし政治的駆け引きを排除することは難しい。しかも最高裁判所の任命権、指名権は内閣にあるので、最高裁判所の独立性についても政治的要素が排除できない危険をはらんでいる。違憲立法審査の手続きが憲法に定められているからと言っても、現実には、国会の多数を占める与党と内閣の政治的影響を受けてしまう。
一方メリットは、組織を含め現状を変えないので、コストがほとんどかからない。最高裁判所の現行判事数を増やすかどうかを検討する程度で済むだろう。「仙人判事」は結局憲法裁判所と同じ権能を最高裁判所の中に作ることとなるので、避けた方がよい。

憲法裁判所の設置か、違憲立法訴訟手続きかは、両者とも固有の問題を抱えてはいるが、現状を大きく変更しないという点では、後者を推すものである。

現行憲法では「日本を守れない」のか?2016年05月07日 21:59

右翼改憲論者の常套句は「現行憲法(特に9条)では日本を守れない」である。

では何から日本を守ることができないのか。
第一は「外国の軍による侵略」
しかし、これは現行憲法でも自衛隊による「個別的自衛権の行使」「防衛出動」で解決できる。
第二は、はっきり右翼たちは言わないけれど、内乱(「左翼」反政府暴力革命)だ。
しかしこれも自衛隊の任務のうち「治安出動」であ足る。
それに「内乱」規模の反政府運動が起きるのは、政府の失政以外にはあり得ず、たいていは反政府側に五分以上の「理」がある。

このように言われると彼らは「日米同盟関係」からの「集団的自衛権」に言及する。
不思議な感覚である。現行憲法はアメリカの押しつけだから気に入らないのに、軍事同盟と駐留米軍は許すのだ。
アメリカは、中国や北朝鮮など児戯に等しいほど、好戦的で世界中に「反米勢力」を抱える国家である。まあ、日本の暴力団で言えば「山口組(分裂前)」と思えばよい。
当時世界をほぼ征服していた「蒙古帝国」ですらできなかった日本の壊滅と占領を、たった四年ほどの戦で達成した絶大な暴力をもった独善的な国だというのに、である。

第一と第二は、そもそも現行憲法の解釈で生まれた「自衛隊」の存在理由そのものだろう。
自衛隊は、外国からは立派な「軍」と思われ、PKO派遣部隊が現地で敵対勢力につかまったら国際法上の「捕虜」の扱いを受けるという、見た目も扱いもバリバリの「軍隊」である。ただ「軍」という名称がないだけだ。
右翼改憲論者は、たぶん大好きであろう「自衛隊」を否定するのだろうか。

第三は「大規模国内テロ」である。
しかし、テロリストが外国人であっても、テロに対処するのは警察であることはアメリカやヨーロッパ「先進国」では当然のこととされる。
911同時多発テロで、アメリカはアフガニスタンにアメリカ軍を投入したが、国内のテロリストに対してはFBIという警察権力が当たっていて、テロリストの逮捕には令状がいるし、司法によって裁かれる。
テロの実行犯(テロリスト)は、まず間違いなく日本人であろう(来日外国人が多くなってもやはり目立つ)、彼らを裁判もなしに殺戮してよいということはあり得ない。

第四は「災害」だそうである。
これは、大地震・大津波、台風、豪雨・洪水、大雪、土砂災害、火山まで、災害の総合商社である日本で、現行憲法が妨げになったことはないことをご存じないと思われる。
内閣が一元的に指揮する(緊急事態条項みたいに)という、現場から離れた遠隔操作が「弊害」以外の何ももたらさなかったのも周知の事実だ。

そもそも「災害」を起こさないようには(台風を逸らしたり火山を活動停止したり)できない。
おきてしまった災害被害を最少にすることと救助救援、復旧復興しかない。
その体制は、国家(政府内閣)が余計な口や手出しをせず、被災現場に金と人員を要求どおりに送り込むことであることは、先述の「周知の事実」として定着している。

最後に、たぶん右翼改憲論者が、一番守りたいのは「国益」。と言っても全国民的利益ではなく、特定の産業資本の海外権益である。

この「権益」がいかに暴力に訴えてでも守りたいものであるかは、アメリカを見ればわかる。
アメリカ軍な守られて(幾分かの威嚇を含む)、あるいは中国人民軍に守られて海外権益をむさぼり食う、その様がいかにもうらやましく、軍隊に守られていない自分たちの投資する日本人が丸裸のようで心細いという不安に突き動かされたがゆえの「守って欲しい」なのだ。

権益・国益というと大層に聞こえるが、要するにヤクザ(=暴力団)の「縄張りとしのぎ」と同じ意味である。ヤクザはこいつを命がけで守りたいがゆえに暴力を厭わない。
世界の中で最大勢力の「暴力団」であるアメリカもまた独自の「国益」を抱えている。それを守るためにはいとも簡単に暴力をふるうアメリカが、日本の国益と対立したとき「義兄弟のちぎり(日米同盟)」か、自分の縄張り(国益)を優先するかは、簡単に結論が出る。

つまり、右翼改憲論者の言ういずれからも日本を「すでに守っている」か「守れない」かのいずれかということになる。

憲法改正私案2016年02月25日 17:28

前文は全面削除。
第一章「天皇」第一条~第八条は変更なし。
第二章「戦争の放棄」は章名を「戦争の放棄と自衛権」に変更
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の規定にかかわらず、自国防衛のための自衛権に基づく軍事力はこれを保持する。
 3 日本国と第3国との間の双務軍事同盟および集団的自衛権はこれを認めない。
 4 国の徴兵権はこれを認めない。
 
第九条の二 前条第2項の自衛権は陸上、海上、航空自衛軍により行使される。
第九条の三 自衛権の行使は日本の領土、領海、領空および国際条約上で認められた排他的水域で他国による攻撃があった場合に認められる。
 2 自衛権による武力行使は、自衛のための最小限とし、他国の領土領海領空では行わない。
第九条の四 前条のほか、国際連合と当事国政府の合意のもとで、他国と共同で平和維持活動に自衛軍を派遣することができる。
 2 派遣中の自衛軍に対する攻撃があった場合の武力行使は、第九条の三にかかわらず、自衛権の行使とする。
第九条の五 平和維持活動中は、捕虜の扱いに関する国際条約における軍の規定を適用する。
 2 平和維持活動中の自衛権の行使による他国民の殺傷について派遣自衛軍において軍事裁判を行うことができる。
 3 軍事裁判の刑罰及び手続きは法律で定める。ただし刑罰に死刑を設けることができない。
 4 軍事裁判の判決に不服のあるものは帰国後通常の裁判を起こすことを妨げない。
 
第3章「国民の権利と義務」
第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
 2.基本的人権の具体的な権利は制限的に解してはならない。
 
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 2.日本に滞在または居住する外国人についても、外国籍であるゆえをもって前項の権利について差別されない。
 
第十五条  公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利であり、その手続きは法律で定める。
○2  すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
○3  公務員の選挙については、普通選挙を保障する。(「成年者による」を削除)
○4  すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
 
第二十一条の一 (知る権利を明文で追加)
国民は、国及び地方公共団体の保管する情報の公開請求ができる。
 2.前項にかかわらず法律により公開を制限することができる。ただし制限期間は30年を超えることができない。
 3.前項の制限ができる情報は、最小限でなければならず、相当の理由を明示しなければならない。
 
第二一条の二
個人に固有の情報は厳重な保護を要する。
 2.国または地方公共団体は保有する個人固有の情報によって、個人の権利を侵害してはならない。
 
第二十一条の三 第二十一条にかかわらず、あらゆる差別に関してそれを煽り、政治目的とする結社、表現はしてはならない。
第二十一条の四 国及び地方公共団体およびそれらが関与する団体においてあらゆる差別はこれを禁ずる。
 2.差別の排除撤廃に関し、国が締結した国際条約に反する法律規則はこれを無効とする。
 3.前項に抵触する法律規則は速やかに変更しなければならない。


第二十四条 婚姻に関する条文だが削除

第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第2項、「全ての証人」を「全ての証人及び証拠品、取り調べ記録」とする。

第四章「国会」
第四十八条  何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
 2 地方公共団体の長及び議会の議員、その他法律で定めた公務員も両院議員を兼ねることができない。
 3 2以上の国籍を持つもので、外国の公務員であるものは、両院議員と兼ねることができない。

以下の2つの条文は削除。

第五十一条  両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五十五条  両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
 
第五章「内閣」
第七十条  内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

次の条文を追加する。

第七十条の一
内閣総理大臣が、心身の故障により意思の伝達が不能となったと認められる場合は、内閣は、法律の定めに基づいて、職務代理者が職務を執行する。
 2.前項の場合において、職務代理者は、30日以内に内閣総辞職するか衆議院を解散しなければならない。
 3.内閣総理大臣が意思の伝達が可能となった場合は、職務代理者は直ちに職務を内閣総理大臣に引き継がねばならない。

自衛権を認めた以上、自衛軍に対する内閣の責任と国会の関与を明確化しなければならないのは当然なので、条文を追加する。

第七十三条の一
内閣は自衛権の発動と終結を決定する。ただし発動及び終結後速やかに国会の承認を得なければならない。
  
第七十三条の二
内閣は自衛軍すべての行動に責任を負い、行動について速やかに国会に報告しなければならない。

第六章「司法」
第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

とはいえ、違憲立法審査権は機能していないので条文を追加する。

第八十一条の一(違憲立法訴訟)
国会で成立した法律が憲法に違反すると両院のそれぞれ3分の1以上議員が認めるときは、法律の公布後30日以内に、最高裁判所に当該法律が憲法に違反し無効である旨の訴訟を起こすことができる。
2.最高裁判所は、訴えが起こされたときから60日以内に違憲か合憲かの判決を下すものとする。
3.前項の判決により違憲と判断された法律または条文は、無効となり、改正の場合は従前の条文が有効となる。
4.違憲立法訴訟は、法施行後の憲法に違反する旨をもっての一般訴訟を妨げない。

第八十二条 裁判の対審及び判決は、法律で定めた少年の裁判を除き公開法廷でこれを行う。

第七章「財政」
変更なし。

第八章「地方自治」
第九十四条の一(住民投票の制度化)
地方公共団体は、行政の執行や財産の管理その他に関することを、住民による直接投票によって決定することができる。
 2.住民投票に関することは法律及び地方公共団体の条例で定める。
 
第九章「改正」
第九十六条 この憲法の改正は、衆議院の総議員の三分の二以上、参議院の総議員の二分の一以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
○2  憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

第十章 最高法規
第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

外国人差別を防ぐ必要から第2項を追加する。

 2.基本的人権の保障は、日本国民でないゆえをもって制限的に解してはならない。

自衛隊は憲法解釈という砂上の楼閣にいる2016年02月25日 17:22

陸海空自衛隊20万人の軍事的能力は世界の中でも上位だそうである。
しかし、憲法第九条によって「陸海空の戦力はこれを保持しない」となっているので、国内的には日本国政府は「防衛力」をもっていて戦力は持っていない、「防衛装備」をもっているのであって武器・兵器は持っていないと言い換える。
このような不自然は「言い換え」の源泉は、自衛隊が憲法第九条とどんな関係にあるのかという「どろどろした」経過にある。
日本国憲法第九条は2つの項からなるシンプルな条文である。

第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
 一つの条文だが、章として独立していて「第二章 戦争の放棄」と題されているから、戦争に対する強い禁忌があるとみるべきだろう。
この第二章・第九条は、「前文」にある「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」を受けて設けられたと考えるのが文章の解釈としてはごく自然であろうと思われる。
少なくとも高校生~大学入試の国語レベルでは、正しいとされる。
つまり、自衛隊の存在は憲法第九条とは相容れない矛盾であるとする「自衛隊違憲論」は強い説得力を持つ。

政府も自衛隊創設以前1946(昭和21)年の吉田首相などは次のような見解を表明している。
「戦争放棄二関スル本案ノ規定ハ、直接ニハ自衛権ヲ否定ハシテ居リマセヌガ、第9条第2項二於テ一切ノ軍備ト国ノ交戦権ヲ認メナイ結果、自衛権ノ発動トソテノ戦争モ、又交戦権モ放棄シタモノデアリマス。
従来近年ノ戦争ハ多ク自衛権ノ名二於テ戦ハレタノデアリマス。
…故ニ我ガ国於テハ如何ナル名儀ヲ以テシテモ交戦権ハ先ヅ第一自ラ進ンデ放棄スル。
…世界ノ平和確立ニ貢献スル決意ヲ先ヅ比ノ憲法二於テ表明シタイト思フノデアリマス。
(引用元;http://tamutamu2011.kuronowish.com/kyuujyouhanketuitirann.htm )

ところが、自衛隊が発足し、防衛庁が設置される過程で政府は憲法の解釈を変更するに至る。

1979(昭和54)年(大村防衛庁長官)

政府の見解をあらためて申し述べます。
第1に、憲法は自衛権を否定していない。自衛権は国が独立国である以上、その国が当然に保有する権利である。……
第2.憲法は戦争を放棄したか、自衛のための抗争は放棄していない。
1.戦争と武力の威嚇、武力の行使が放棄されるのは、「国際紛争を解決する手段としては」ということである。
2.他国から武力攻撃があった場合に、武力攻撃そのものを阻止することは、自己防衛そのものであって、国際紛争を解決することとは本質が違う。従って自国に対して武力攻撃が加えられた場台に、国土を防衛する手段として武力を行使することは、憲法に違反しない。
(引用元は上記と同じ)

ここで、法文解釈のマジックとも言うべき方法がとられている。
条文を、句読点で区切られるセンテンスで個別に解釈するのである。すなわち第1項を「国権の発動たる戦争と」「武力による威嚇又は武力の行使は」「国際紛争を解決する手段としては」に分解する。
第2項も「前項の目的を達するため」「陸海空軍の戦力はこれを保持しない」「国の交戦権はこれを認めない」と分解する。
次ぎに、分解されたそれぞれのセンテンスを個別に解釈する。すると、条文全体で意味していることを離れて自由度が増す。
第一項は次のようになる。
「国権の発動たる戦争」=宣戦布告を行った国際法上の国家同士の戦争と解釈する。
「武力による威嚇又は武力の行使」=宣戦布告なき武力衝突又は戦闘行為。
「国際紛争を解決する手段」=外交や国際政治上のお互いに相容れない主張を解消できない場合の手段。つまり武力で相手国を攻撃又は威嚇することで当該紛争を解決する、ほぼ侵略戦争と同じ意味。
続いて第二項、
「前項の目的を達するため」=宣戦布告を伴う国家間の戦争や、外交・政治問題を解決する手段としての戦争をしないという目的。この文章が次のセンテンスに係るとする。元総理大臣であった芦田均が退任後かなり後に言いだした解釈と同じであるので「芦田修正」と呼ばれることもある。
「陸海空軍の戦力はこれを保持しない」=上記目的、国家間の戦争や交渉で解決できない問題に対する手段としての戦力は保持しない。
「国の交戦権はこれを認めない」=交戦権は国際法上明確でないとする記述がWikiにある。その記述に拠れば「交戦状態にある国=戦時国際法が適用される状態にある場合の権利」というのが国際法上の意味合いであって、「国が戦争をする権利」という憲法前文や九条全体から受ける意味合い定義はないという。

以上ようなセンテンスごとの解釈をつなげると、政治外交などの手段で解決できない他国とのお互い相容れない紛争をその国に武力を行使したり威嚇したりするための戦力保持やその延長にある戦争はしない、となる。

この解釈の中に、他国から理不尽に日本が武力攻撃を受けたとき、つまり喧嘩を売られたとき、応戦する正当防衛の権利=自衛権は禁止されておらず、「その目的(国際紛争を解決するという目的ではない)」のために、陸海空の戦力を持つこと、つまり自衛隊とその運用としての自国防衛戦闘(自衛権)は禁止されてはない。
世界屈指の装備と戦闘能力を持つ自衛隊が堂々と、「戦争放棄」という憲法の下で存在できる理由づけはこのように為される。

現在の政府見解(防衛省のサイトより;http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html )
>>防衛省見解。

わが国は、第二次世界大戦後、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよう決意し、平和国家の建設を目指して努力を重ねてきました。恒久の平和は、日本国民の念願です。この平和主義の理想を掲げる日本国憲法は、第9条に戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関する規定を置いています。もとより、わが国が独立国である以上、この規定は、主権国家としての固有の自衛権を否定するものではありません。政府は、このようにわが国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上認められると解しています。このような考えに立ち、わが国は、憲法のもと、専守防衛をわが国の防衛の基本的な方針として実力組織としての自衛隊を保持し、その整備を推進し、運用を図ってきています。

(1)保持できる自衛力
 わが国が憲法上保持できる自衛力は、自衛のための必要最小限度のものでなければならないと考えています。その具体的な限度は、その時々の国際情勢、軍事技術の水準その他の諸条件により変わり得る相対的な面があり、毎年度の予算などの審議を通じて国民の代表者である国会において判断されます。憲法第9条第2項で保持が禁止されている「戦力」にあたるか否かは、わが国が保持する全体の実力についての問題であって、自衛隊の個々の兵器の保有の可否は、それを保有することで、わが国の保持する実力の全体がこの限度を超えることとなるか否かにより決められます。
 しかし、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されません。たとえば、大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母の保有は許されないと考えています。<<

しかし、中高校生レベルで理解される日本語が「専門家」によって正解とされないというのは、自衛隊の存在が「戦争放棄」をうたう日本国憲法に合致すると国民的に合意されるものではなく、時の政権・政治による恣意が働いてしまうと考えられる。
政権が変われば、自衛隊が「憲法違反」とされることもあり、陸海空20万人の自衛官の地位や雇用、装備の存廃も含め、不安定な存在であることになる。

それゆえ憲法改正「私案」では、次のように改正することを提案している。
第二章「戦争の放棄」は章名を「戦争の放棄と自衛権」に変更
第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の規定にかかわらず、自国防衛のための自衛権に基づく軍事力はこれを保持する。
 3 日本国と第3国との間の双務軍事同盟および集団的自衛権はこれを認めない。
 4 国の徴兵権はこれを認めない。
 
第九条の二 前条第2項の自衛権は陸上、海上、航空自衛軍により行使される。
第九条の三 自衛権の行使は日本の領土、領海、領空および国際条約上で認められた排他的水域で他国による攻撃があった場合に認められる。
 2 自衛権による武力行使は、自衛のための最小限とし、他国の領土領海領空では行わない。
第九条の四 前条のほか、国際連合と当事国政府の合意のもとで、他国と共同で平和維持活動に自衛軍を派遣することができる。
 2 派遣中の自衛軍に対する攻撃があった場合の武力行使は、第九条の三にかかわらず、自衛権の行使とする。
第九条の五 平和維持活動中は、捕虜の扱いに関する国際条約における軍の規定を適用する。
 2 平和維持活動中の自衛権の行使による他国民の殺傷について派遣自衛軍において軍事裁判を行うことができる。
 3 軍事裁判の刑罰及び手続きは法律で定める。ただし刑罰に死刑を設けることができない。
 4 軍事裁判の判決に不服のあるものは帰国後通常の裁判を起こすことを妨げない。

憲法を改正しよう2015年05月03日 13:56

憲法記念日だからひと言、私は憲法に関してはリベラル改憲派である。
9条は、解釈の曖昧さをなくし、自衛隊の現状を肯定した次のような条文に改正すべきである。
9条1項 
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる 戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(これは理念なので変えない)
2項
前項の規定にかかわらず、自国防衛のための自衛権に基づく軍事力はこれを保持する。
3項
第2項の自衛権の行使は、日本の領土、領海、領空および国際条約上で認められた排他的水域、国際機関の合意のもとで行う平和維持活動中の地域の中で、他国による日本および国際機関の合意事項を遂行する国に対する戦闘行為があった場合にのみ認められる。
4項
日本国と第3国との間の双務軍事同盟および集団的自衛権はこれを認めない。
5項
国の徴兵権はこれを認めない。


次ぎに問題になるのは24条=婚姻である。大胆に同性婚に道を開いておいた方がよい。
現行; 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
改正案;婚姻は配偶者間の合意により成立し、配偶者が同等の権利を有することを基本として・・・云々。
2 配偶者たる要件は法律でこれを定める。

財産権とりわけ私有財産の不可侵権を規定する29条は、トマ・ピケティによる「資産課税強化」の方向性を明確にして、相続による資産占有層の固定を減じるうえで改正すべきである。
29条 現行;財産権は、これを侵してはならない。
改正案;財産権は相続によって得たものを除きこれを侵してはならない。
第4項(付加);相続で得た財産の内容は法律でこれを定める。

議会制民主主義(間接民主主義)の限界を補完するため直接民主制(国民投票)の地位を定める。
41条 現行;国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
改正案;(41条の1として挿入する)前条にかかわらず、国会の発議による国民投票による結果は、国会での議決にかかわらず国権の最高意思決定とする。
第2項;前項の国民投票に関する要件及び手続きは法律で定める。

衆参両議院議員に関する45条46条の次ぎに付け加え、「1票の格差」問題に対応する。
改正案(46条の1);両議院の議員の権能のうち、議決権については、選挙区の有権者数の格差によって2分の1を下限として制限することができる。
第2項;前項の制限に関する要件と手続きは法律で定める。

最高裁判所の憲法審査権を定めた81条につぎの条文を追加する。
現行;最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
改正案(81条の1);国民は、国会で審議されまたは議決された法案が、憲法に違反すると認めるときは、最高裁判所に訴えを提起することができる。

地方の議員を選挙で選ぶことについて定める93条第2項を改正する。
現行;地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
改正案(第3項);前項にかかわらず、地方公共団体の議員については選挙に代えて抽選など公平な選出法を採用することができる。